調査をしていて、初めて切なく感じた。
普段なら、かなりドライに仕事をこなす。

熱くなる場合、むしろ依頼者側の視点に立ち、依頼者が奥さんなら旦那の浮気相手は「泥棒猫」、旦那は「最低男」という気持ちで、証拠獲得に燃える事となる。


・・・浮気相手の女がとても幸せそうであった。
いやらしさは全くなく、男と逢えた事をとても素直に表情に出し、喜んでいる。
私は女にも家庭がある事をつかんでいた。
撮影したビデオを写真としておこす為、私は静止画をキャプチャし、二人の表情をパソコンに取り込んでいる。


とても、幸せそうな二人。
40前後の二人がこれ程までに絵になるとは。

逢った瞬間にお互いを抱擁し合い、女は幸せそうに男の胸に顔を埋めた。
多くの人が行き交う横浜駅構内。

二人の周囲は帰路に着くサラリーマンが足早に通り過ぎて行く。
二人の時間だけが止まって見えていた。
周りの景色だけが流れ、二人は一枚の絵のように私には見えた。

二人の笑顔はお互いにだけ向けられ、また人ごみの中へと消えていこうとしていた。


そこまで見て、私は作業の手を休める。
苦しかった。


なぜ、二人は各々自分の配偶者を幸せに出来ないのか。
なぜ、二人は各々自分の配偶者に幸せを感じさせてもらえないのか。
人はなぜ一人の人を愛し続けていく事が出来ないのだろう。
その笑顔は旦那さんに、または守り続けていこうと決めた奥さんに向けられるべきものだろう。
もし、この二人が一緒になったとして、二人は幸せな結婚生活を送る事が出来るのだろうか。


仕事をしていて、こんな気持ちになったのは初めての事だった。
感情を棄てなければいけない職業だ。
読んでもらう為でなく、私の中から吐き出す為に、ただ書かせてもらった。



異性に惹かれ、お互いに興味を抱き、恋愛感情が生まれる。
お互いを知る内に、お互いの似通った部分、異なる箇所、価値観が見え始め、また再び愛情が増幅する。
注ぎ足されていく水がコップから溢れるように、二人は一緒になる時を迎え、幸せな結婚生活へと入っていく。



日常生活となった当たり前の二人の時間。
一緒になる前は二人の時間を合わせるのも大変で、お互いに逢える日を心待ちにし、無理をしてでも貴重で有意義な時間を共有しようとする。
今や二人の時間は当たり前。
生活をしていれば問題も抱える。
二人以上の人間が集まれば必ず意見の食い違いも生じる。
お互いに見えていなかった部分の発見をし、良くも悪くも深く知り合う事となる。


毎日、思いやりを以って相手と接する。
常に相手の気持ちをまず考える。
愛情表現を怠ることなく、お互いに必要性を感じさせ、さらに愛情を増幅させていく。


不可能なのだろうか。
毎日、こんなものを見ているから、そう感じるのか。


不可能ではないはずだ。
はじめ抱いた愛情に嘘偽りはないのだから。


貫き通した深い愛情をいつか見てみたい。
















































































































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